SQLインジェクションとは?
SQLインジェクションとは、ウェブアプリケーションがデータベースとやり取りする際に、悪意のあるデータを入力されることで不正なSQL文が実行される攻撃手法です。これにより、攻撃者はデータベース内のデータを閲覧・改ざんしたり、アプリケーションを正常に動作させなくしたりします。
なぜSQLインジェクションが発生するのか?
SQLインジェクションが起きる主な原因は、入力値を適切に処理せずにSQL文としてそのまま使用することです。たとえば、以下のようなコードがあるとします
query = f"SELECT * FROM users WHERE username = '{username}' AND password = '{password}'"
このコードでは、username
やpassword
にユーザーが入力した値がそのまま埋め込まれます。通常の入力であれば問題ありませんが、攻撃者が以下のような値を入力すると、問題が発生します。
攻撃の具体例
正常な入力の場合
- ユーザー名:
user123
- パスワード:
password123
生成されるSQL文は以下の通りです:
SELECT * FROM users WHERE username = 'user123' AND password = 'password123'
データベースはこの文を受け取り、正しいユーザー情報を返します。
SQLインジェクションの例
攻撃者が次のような値を入力した場合:
- ユーザー名:
admin' --
- パスワード: (空欄)
生成されるSQL文は以下のようになります
SELECT * FROM users WHERE username = 'admin' --' AND password = ''
--
はSQLでコメントを意味するため、それ以降の文は無視されます。この結果、以下のように解釈されます:
SELECT * FROM users WHERE username = 'admin'
これにより、パスワードの検証がスキップされ、攻撃者が「admin」としてログインできる状態になります。
SQLインジェクションの被害
SQLインジェクションを成功させた攻撃者は、さまざまな悪事を働くことが可能です。
- 不正ログイン
- 攻撃者は認証をバイパスして管理者としてログインできます。
- データの漏洩
- データベース内のすべてのデータを取得するSQL文を実行可能。
SELECT * FROM users
- データの改ざん
- データを削除したり、改ざんするSQL文を送信可能。
DELETE FROM users
- システムの破壊
- システムを正常に動作させなくするSQL文を埋め込むことも可能です。
SQLインジェクションを防ぐ方法
SQLインジェクションを防ぐためには、以下のような対策を講じる必要があります。
プリペアドステートメント(Prepared Statement)の使用
プリペアドステートメントは、SQL文とデータを分離することで、SQLインジェクションを防ぎます。たとえば、Pythonで以下のように記述します
query = "SELECT * FROM users WHERE username = %s AND password = %s"
cursor.execute(query, (username, password))
この方法では、ユーザー入力がデータとして扱われるため、攻撃者がどんな悪意のある値を入力してもSQL文として実行されません。
入力値のバリデーション
ユーザーが入力した値に問題がないかを確認します。たとえば、次のようなチェックを行います:
- 許可された文字のみを使用する(例:正規表現)。
- 特殊文字(
'
,"
,--
,;
など)を除去またはエスケープする。
最低限の権限でデータベースを操作する
アプリケーションがデータベースを操作する際に使用するアカウントには、最低限の権限のみを与えます。たとえば、データの読み取り専用権限に制限すれば、データ削除やテーブルのドロップを防ぐことができます。
エラーメッセージの非公開
SQLエラーが画面に表示されると、攻撃者にとって有益な情報を与える可能性があります。以下のようなエラーメッセージをユーザーに見せないようにしましょう
You have an error in your SQL syntax...
代わりに、一般的なエラーメッセージ(例:「システムエラーが発生しました」)を表示します。
まとめ
SQLインジェクションは、システムの脆弱性を突いてデータベースを不正に操作する攻撃です。しかし、プリペアドステートメントの使用や入力値の適切な処理を行うことで、十分に防ぐことが可能です。
重要なのは、「ユーザーの入力を信じない」という基本方針を徹底することです。少しの注意で大きな被害を防ぐことができます。開発者として、このリスクを軽視せず、適切な対策を実施しましょう。
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