はじめに
XSS(Cross-Site Scripting、クロスサイトスクリプティング)とは、悪意のあるスクリプトをウェブサイトに埋め込む攻撃のことです。攻撃者がユーザーのブラウザでスクリプトを実行させることで、情報を盗んだり、偽のページに誘導したりします。
簡単に言うと、攻撃者が「これ動かしてみて!」という悪い命令を、ウェブサイトを通じてユーザーに押し付けるイメージです。
XSSが起きる仕組み
例:コメント機能があるウェブサイト
あるウェブサイトに、ユーザーがコメントを投稿する機能があるとします。
- ユーザーが「こんにちは!」というコメントを投稿すると、以下のように表示されます
こんにちは!
- しかし、攻撃者が次のようなスクリプトを投稿したらどうなるでしょう?
<script>alert('あなたのクッキー情報を盗みます!');</script>
- サイトに投稿されたこのコメントを閲覧する他のユーザーのブラウザで、スクリプトが実行されます。すると、ユーザーのクッキー情報(ログイン状態を保持する情報など)が盗まれる可能性があります。
XSSの種類
XSSには主に以下の3種類があります。
反射型XSS
ユーザーが特定のリンクをクリックすると、そのURLに埋め込まれた悪意のあるスクリプトが実行される攻撃。
- 攻撃者が用意したリンク
http://example.com/search?q=<script>alert('XSS!');</script>
- ユーザーがリンクをクリックすると、ブラウザに「XSS!」と表示される。
保存型XSS
悪意のあるスクリプトがウェブサイトに保存され、他のユーザーがそれを閲覧したときに実行される攻撃。コメント欄やレビュー機能が狙われやすい。
DOM型XSS
ウェブページのJavaScriptの操作によって、ユーザーが閲覧中にスクリプトが実行される攻撃。
XSSの被害
XSS攻撃によって、以下のような被害が発生します。
- 個人情報の盗難
- クッキー情報やセッションIDを盗まれることで、不正ログインが可能に。
- フィッシング詐欺
- ユーザーを偽のログインページに誘導し、パスワードを入力させる。
- 改ざん
- ウェブページの内容を攻撃者が改ざんし、偽情報を表示。
- ウイルス拡散
- スクリプトを利用してマルウェアを配布。
XSSを防ぐ方法
エスケープ処理
ユーザーが入力した内容を表示する際、HTMLとして解釈されないようエスケープ処理を行います。例えば:
&
→&
<
→<
>
→>
コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の設定
CSPを利用することで、信頼されたスクリプトのみを実行するようにブラウザに指示します。
Content-Security-Policy: default-src 'self';
入力値の検証
ユーザーが入力したデータをチェックし、不正な内容(スクリプトや特殊文字など)が含まれていないか確認します。
HTTPOnly属性の利用
クッキーにHTTPOnly
属性を設定することで、JavaScriptからクッキー情報を読み取れなくします。
Set-Cookie: sessionid=abc123; HttpOnly;
フレームの制御
クリックジャッキング攻撃を防ぐため、X-Frame-Options
ヘッダーを設定します。
X-Frame-Options: DENY
実例とその防止
このような悪意のある投稿を、実際のサイトでは絶対に行わないでください!!
悪意のある投稿
<script>alert('攻撃成功!');</script>
エスケープ処理を行った結果
<script>alert('攻撃成功!');</script>
これにより、スクリプトがただの文字列として扱われ、実行されなくなります。
まとめ
XSSは、ユーザーのブラウザで悪意のあるスクリプトを実行させる攻撃です。しかし、エスケープ処理やセキュリティポリシーの設定など、基本的な対策を行うことで防ぐことができます。
重要なのは、「信頼できないデータを信じない」ことです。開発者として常にユーザー入力を疑い、安全なアプリケーションを構築しましょう。
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