バックアップと障害対応の基本:AWSでのデータ保護と災害復旧入門

AWS概要

はじめに

ITシステムにおいて、データのバックアップと障害対応(Disaster Recovery)は、サービスを継続的に提供し、万が一の障害や災害から迅速に復旧するために欠かせません。AWS(Amazon Web Services)は、信頼性の高いバックアップ機能と、災害復旧に適したさまざまなツールやサービスを提供しています。本記事では、バックアップと障害対応の基本的な概念と、AWSで利用できる主なバックアップ手法について解説します。

S3 Glacierによる長期保存データのバックアップ

S3 Glacier(Amazon Simple Storage Service Glacier)は、データを長期保存するための低コストで高耐久性のストレージサービスです。S3 Glacierは、アクセス頻度が低いデータ(アーカイブデータ)を格納するのに適しており、保存コストを大幅に抑えたい場合に最適です。

S3 Glacierの特徴

  • コスト効率が高い:長期間保存するデータのコストが低いため、アクセスがほとんどないバックアップデータの保管に最適です。
  • 高耐久性:99.999999999%(11ナイン)の耐久性を提供し、データが失われるリスクを最小限に抑えています。
  • アーカイブ取り出し:データの取り出しに時間がかかるため、頻繁にアクセスする必要がないデータ向けです。必要に応じて数分から数時間のリクエストオプションを選択できます。

S3 Glacierの活用例

  • 長期的なバックアップデータの保存:企業や機関での過去のデータ、アーカイブ用のデータバックアップなど。
  • 法令遵守のためのデータ保存:特定の期間にわたってデータを保持しなければならない場合に適しています。

設定方法の概要

  1. S3バケットの作成:まず、Amazon S3でバケットを作成します。
  2. ライフサイクルポリシーの設定:S3のライフサイクル設定を利用して、一定期間が過ぎたデータをS3 Glacierへ自動的に移行できます。

RDSの自動バックアップとスナップショット

AWSのRelational Database Service(RDS)は、データベースの管理を効率化するサービスで、自動バックアップ機能や手動でのスナップショット作成が可能です。RDSのバックアップ機能を使うと、データベースの復元が容易になり、データ損失のリスクを軽減できます。

自動バックアップ機能

  • バックアップの保持期間:RDSは、ユーザーが指定した期間(最大35日間)までのデータベースのバックアップを自動で取得します。
  • ポリシーに応じた保存:バックアップ期間が終わると、古いバックアップは自動的に削除され、最新のバックアップが保存されます。
  • 復元ポイントの選択:指定した日時に戻してデータベースを復元することができ、障害発生時に迅速なリカバリーが可能です。

スナップショットによる手動バックアップ

  • 柔軟なスナップショット管理:RDSでは、ユーザーが必要に応じてスナップショットを作成し、任意のタイミングで復元が可能です。
  • コスト管理:スナップショットは手動で管理するため、保存期間やバックアップの回数を調整できます。
  • クローン作成:スナップショットからクローンデータベースを作成し、テスト環境や開発環境として利用することも可能です。

RDSバックアップ設定の概要

  1. 自動バックアップ設定:RDSインスタンスを作成する際に、自動バックアップの保持期間を設定します。
  2. スナップショットの作成:AWSマネジメントコンソールやCLIからスナップショットを作成することができます。

災害復旧(Disaster Recovery)の基本概念

災害復旧(DR:Disaster Recovery)は、自然災害やシステム障害によってサービスが停止した場合に備え、データやシステムを復旧し、迅速に業務を再開するための計画や対策のことを指します。AWSでは、複数のリージョンやアベイラビリティゾーン(AZ)を利用することで、災害リスクの分散と迅速な復旧を図れます。

災害復旧の基本戦略

  1. バックアップと復元(Backup and Restore):最もシンプルな戦略で、S3やRDSのバックアップを用い、障害が発生した場合に手動で復元します。
  2. パイロットライト:最小限のシステムを別のリージョンで稼働させておき、必要に応じて全面稼働に切り替える方法です。
  3. ウォームスタンバイ:縮小した形でシステムを待機させ、障害発生時にはすぐにサービスを稼働できるようにしておきます。
  4. マルチサイト:複数のリージョンに同じ規模のシステムを稼働させ、障害発生時には別のサイトで業務を継続する方法です。

AWSでの災害復旧設定

  • マルチAZ配置:RDSやS3をマルチAZ構成にすることで、障害時にも自動でフェイルオーバーが行われ、業務の継続性が確保されます。
  • リージョン間レプリケーション:S3のクロスリージョンレプリケーションやRDSリードレプリカの設定を通じて、異なるリージョンにデータのコピーを保管することで迅速な復旧が可能です。
  • CloudFormationテンプレート:インフラの設定をテンプレート化し、異なるリージョンでの迅速な復旧を支援します。

災害復旧計画の作成ポイント

  1. 目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO):システム復旧にかけられる最大時間と、どの時点までデータを復元する必要があるかを計画時に決定します。
  2. 定期的なバックアップテスト:バックアップの動作確認を定期的に行い、想定通りの復旧が可能かを検証します。

まとめ

AWSは、多彩なバックアップ機能と災害復旧のためのツールを提供し、信頼性の高いシステム運用をサポートしています。S3 GlacierやRDSのバックアップ機能を使ったデータ保管から、リージョン間のレプリケーションを利用した災害復旧まで、多くのオプションを組み合わせることで、企業の要件に合った保護・復旧計画を構築できます。システム運用においては、障害が発生してから対処するのではなく、日頃からの準備とテストを欠かさず行うことが重要です。

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